以前記事にしたスタッフのmacchi cyclesフレームがようやく組み上がりましたのでご紹介します。
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◆パーツアッセンブル
フレーム:macchi cycles クロモリ×カーボンフレーム
フォーク:Enve Road disc brake folk 1.25
コンポーネント:SRAM Red eTap AXS HDR
ハンドル:One by Esu ジェイカーボン スーパーアグリー
ステム:One by Esu カーボンスージー ステム
ヘッドセット:CHRIS KING No Threadset Tapered  MatteSlate
BB:CHRIS KING Threadfit T47 MatteSlate
ホイール:ZIPP Firecrest 303 Disc
タイヤ:SHWALBE ONE 28C Tubeless Easy
サドル:Prologo Scratch M5 Pass


◆オーダーで目指したもの
今回オーダーするにあたってまず目指したのは新しい要素をたくさん盛り込んだ面白いクロモリロードを作ること。伝統的なクロモリの良さはみなさんの既に知るところですが、逆に注目されることの少ない金属フレームの”新しさ”も知って欲しいと思ったのがスタートです。オーダーフレームにもトレンドや進歩があって、そこにはとんでもなくニッチで奥深い世界が広まっています。そんな世界を垣間見て少しでも興味を持っていだたくきっかけの1台になれば良いなと想いをこめました。

また、クロモリロードをディスクブレーキで試作してみるにも良い時期でした。作ってしまえばメイン機として運用するので乗り味は本気で悩んで考えなければなりません。当時(今尚かも)まだまだ正解の見えなかったスチールバイクのディスクロードに挑戦するいいきっかけになりました。
私の乗り方はレース等には出ず、ほとんどはカメラを背負ってのツーリングを楽しむスタイルですので長距離をストレスなく移動できる走行性能と快適性の確保が重要です。ところが、一般的にクロモリディスクロードの課題として「硬く重くなり素材のネガティブな面が表に出がち」というものがあります。ツーリングバイクとしては快適性は妥協出来ないポイントなので植田氏と相談しながら私達なりの解決策を探っていきました。

◆設計のポイント
まず、ヘッド周りの過剰な剛性を除くため、当時よく採用されていた44mmパイプやインテグラルヘッドセットは使わず1 1/8- 1 1/4のテーパードヘッドに従来型のアヘッドタイプを選びました。スタックハイトは高くなりますが、ヘッドチューブを切り詰めるほどの落差は求めていないので問題ありませんでした。
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パイプの選定においてもトップ28.6mmダウン31.8mmとディスク用としてはやや細身のものを選び、さらにトップチューブを長くするためホリゾンタルフレームにしています。金属パイプは同じ素材であれば長くなるほど剛性が落ちます。金属製の物干し竿がよくしなっているあのイメージです。本来フレームサイズが大きくなるほど剛性が落ちるため高める工夫をすることが多いのですが、今回は逆にどこで削れるかを模索しているあたり今まで(リムブレーキ)の設計の過程とは全然違いますねぇなんて話していました。もちろん長距離のツーリングに向けてある程度の走行性能の確保は必須ですので最終的なバランスの調整は植田氏におまかせ。

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そしてシートチューブには肉厚なグラファイトデザインのカーボンパイプ。同社は自転車フレーム生産時代に過剰な剛性を良しとせず、しなりをいかした加速と乗り心地を提案していました。そんなメーカーならきっと……と期待を込めて導入しましたがこれがどうやら大正解。非常に高い振動吸収性を発揮してくれています。肉厚であるため軽量化の効果はほとんどありませんが、見た目にも主役になってくれて大変満足度の高い部位になっています。


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またシートステーのにも振動減衰を狙って曲げを加えています。パイプ長が伸びるのでわずかに重量は増しますがそれなりの突き上げ緩和の効果はあるように感じます。何よりこの曲線がセクシーですよね。

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また性能とは別の話になりますが、新しいものをということでブレーキホースをダウンチューブからチェーンステーまで完全に内装化しています。従来のねじ切りBBではシェル内部が狭すぎて難しかったことですが、T47という大径BBを採用することでクリアしました。個人的にはケーブル類はルーティング、メンテナンス性を考慮してすべて外が好きなのですが、見た目に限って言えば内装の方がずっとすっきりします。今回は無線コンポと合わせてとことんシンプルなシルエットを目指しました。
さらにこのT47規格はねじ切りのメンテナンス性の高さに加えて大径化するクランクシャフトにも無理なく対応できるので、内装フレームでなくても今後のスタンダードになり得るポテンシャルを持っています。

◆走行インプレ
で、組み上がって結局どうだったかという話ですが、結論から言うととても乗り心地がよくて軽快に走る期待以上のフレームになりました。全体的にはしなやかでクロモリらしい感触ですが、ダンシング時の振りがスルーアクスル のおかげかリムフレームの時より剛性感がありキビキビ反応します。不快な突き上げは全くなく、疲れにくいとても優秀なツーリング用ロードバイクになりました。
ほぼ同じの体格のmacchiのリムブレーキロードのオーナー様にも乗ってもらって自分のものより乗り心地が良くて漕ぎ出しが軽い!と感想を頂いてるのでプラシーボではないと思います。ただ、快適性についてはZIPPのホイールがいい仕事をしすぎてるので、どこまでがフレームのものなのか測りにくい部分ではあるので今後ホイールを変えたり色々と試してみようと思います。
重量についてはペダル込みで8.3kgとなりまずまず。金属のディスクロードではこの辺りが妥当な落とし所になりそうです。もちろん、今回はそこまで軽さを追求していませんのでまだ軽量なフレームを作ることは可能でしょう。

◆ディテールなど
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メインのコンポーネントはSRAM Red  eTap AXS。フレームを無線コンポ専用にすることでとことんシンプルなシルエットを実現しています。

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ドライブトレインの美しさだけでもSRAMを考慮する価値はあると思います。性能面では先代eTapよりフロント変速の反応が強化され、チェーンリングの寿命も大幅に向上しています。

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ケーブル類がブレーキホース2本だけになりますのでヘッドのロゴがはっきり見えるくらいスッキリ。ハンドリングもかなり軽く仕上がっています。

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シフト台座もケーブルもないとこんなにも細身のシルエットが際立ちます。


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譲れなかったポイントである1 1/8 - 1 1/4のテーパードヘッド。
余談ですが東京サンエスから最近発売されたスチールディスクロードJFF #701Dの設計にも私と似た考えが見られます。


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初期設計案にあった大径ヘッドチューブをやめ、ディスクでも従来通りの上下1 1/8(IS)に落ち着かせています。その際オーバーサイズ用のディスクフォークまで一から作っているあたりは流石サンエスさんだなと。共感できる仕様かつカラーオーダーまで出来て価格は156,000円〜なのでオーダーでなくても良いクロモリフレームが安く欲しい方にはおすすめです。

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テーパードヘッドを選んだもう1つの理由はヘッドチューブがステムより太くなるのを避けたかったからです。あくまでクロモリらしい細身のシルエットを壊さないよう注意を払いました。カラーの面ではギラつくメタリックカラーの間にあえてマットカラーのヘッドパーツを挟んで落ち着かせています。せっかくのCHRIS KINGなので得意のアルマイトカラーを使いたくなるところをぐっと抑えました。

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さらにハンドルにはOne by Esu独自の"VDS"という振動減衰機構が入っているものを選びました。カーボンシートの積層に部分的に振動抑制効果のあるシートを挟んで作られています。


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ステムのフェイスプレートはハンドルと合わせるためあえて塗装せず

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Fディレイラーの取り付けバンドも幅ぴったり

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CHRIS KINGのT47BB。カラーはヘッドパーツと合わせています。

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ワンオフで作っていただいたシートトップもいい感じにおさまりました。前後と角度の調整が容易にできる優れものです。

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サドルは最近1番のお気に入りのPrologo Scratch M5です。Fabric Scoopを気に入って長らく愛用していましたが、こちらの方が擦れが少なくポジションの自由度も高かったので乗り換えました。坐骨への負担も大幅に軽減されて長距離でも安心です。

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ホイールはZIPPのFirecrest 303です。フックレスリムの採用でリムの軽量化、タイヤの低圧化、値下げを同時に達成した優秀なホイールです。28Cタイヤに空気圧は3.5bar前後で乗れるので従来のロードの乗り心地とは一線を画します。チューブレス 専用ホイールにはなりますが、その不自由さを補って余りあるメリットが享受できます。下位の303Sより価格が上がる分、ハブが大幅に強化されているので更なる走行性能が欲しい方にはこちらがおすすめです。

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28Cタイヤをセットすることでリムとほぼ平面になってエアロ効果が最大化するようになっています。デザインや仕様は一新されましたがZIPPらしいディンプルは健在。

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◆デザインなど
最後にカラーリングやデザインなどについて。実はここが1番悩み苦しんだ過程なんですけれど、その分とっても楽しんだ思い入れのある部分でもあります。
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ここについてはフレームの記事で書いた通り。前からの流れを断ち切らない方法で色の切り替えをしたく、グラデーションとも違う表現方法を模索した結果です。提案をくれた友人に感謝!

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フレームの記事でも書きましたが1本だけアクセントに入れたオレンジは旅の相棒のSONYのカメラから
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フレーム全体のカラーリングのテーマは"月夜"です。昔から月が好きなんですよね、なぜかは分かりません。中学生のときにたまたまアメ村の雑貨屋で見かけたナイトメアビフォアクリスマスのポスターを何の映画かも知らず買ったのを覚えています。そういえば僕がJAZZを好きになったきっかけはエヴァのFly me to the Moonでしたし、子どもの頃RPGゲームで1番好きな技は乱れ雪月花でした。アニメやゲームの影響を多分に受けている可能性は否定できません。
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友人に相談してデザインしてもらった月夜です。色味ではずいぶんと悩みましたが、これくらい緑みを帯びたものが今の自分にはしっくりきました。

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深く濃い夜の青のフレームにタイヤは満月をイメージ、月明かりに照らされて輝く雲がシルバー。ほぼイメージをそのまま具現化できたと満足しています。

事前にイメージをイラスト化して考えていたので調整はしやすかったです。ロゴの位置にもちょっとこだわり。小さめで真ん中より少し上で指定
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当店でオーダーして頂ける際、ご希望がありましたらこんな風にイラストを起こしてご提案させて頂いております。有る無しではイメージのしやすさが大きく違ってくると思います。デザインが決まらない!という方も大体のイメージを伝えてくだされば少しずつ形にしていけるようお手伝いさせて頂きますのでお気軽にご相談ください。

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ヘッドロゴ初期案。macchiのmを縦にして3っぽく

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羽にもトップチューブと同じオレンジ入れてみよっかver

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月夜のイメージがかたまりかけてた頃に見つけたパイロットの万年筆用インク。名前から色までイメージ通りすぎて驚きました、素敵です。買いました。

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幸せなことにサメハルさんによって私の自転車のイメージを擬人化したステッカーを作って頂きました。私のこだわったディテールを余すことなく取り上げてデザインに落として混んでくださっていて感激。粋な計らいをしてくださったななしきさんにも感謝!
ステッカーは店頭で配布していますのでもらって頂ける方はお声がけください。

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タイヤはこう撮ると三日月になるんです。イタチは知る人ぞ知る店に2度現れた子です。他にもたくさんの要素が盛り込まれているので探してみてください。



サメハルさんの自転車擬人化はこちらのリンク先から不定期に販売されていますので気になった方はぜひチェックを。


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かなりの長文になり失礼しました。クロモリオーダーの楽しさ、出来ることの多さ、奥深さが少しでも伝われば幸いです。興味を持ってくださった方はスタッフまでお気軽にお声がけください。一緒に最高の自転車について考え、語り合いましょう。オーダーバイクの納期はだいたい4〜6ヶ月ほど。待つ期間を考えるとベストな発注タイミングは興味を持ったらすぐ!ではないでしょうか。ぜひご検討ください。


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【南船場店】
営業時間:11:00 〜 20:00
TEL:06−7182−2721
e-mail:kandmcycle4@gmail.com
定休日:なし 

【堺 上野芝店】
営業時間:11:00 〜 20:00
TEL:072-247-9914
e-mail:kandmcycle4@gmail.com
定休日:毎週水曜日